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祖父 1


祖父はとても厳格な人でした。
あまり、おしゃべりもしない人でした。
一台しかない我が家のテレビは「野球」「時代劇」「ニュース」
この三つの番組しか見れなくなりました。
本当は、子供心に、当時流行っていた歌番組など見たかったのですが
とても、こわくてチャンネルを変える勇気はありませんでした。
夜八時の就寝は当たり前。
朝五時に起床。そして、朝の散歩。
散歩の途中にある、草花の名前を一つ一つ教えてくれました。
おかげで、団地内にある草花のほとんどの名前を覚えてしまいました。
足が丈夫なことが自慢で、どこに行くのも歩いていきました。
よく、私たち姉弟は山を越えて鎌倉まで行きました。
大人になった今歩いても、二時間はかかる道のり。
祖父は、当時小学生だった私たちにも当たり前のように歩かせていました。
往復で五時間はかかっていたと思います。
途中、弟が駄々をこねると
「あそこまで行けばアイスを買おう」と、言いながら歩かせました。
帰ってくると、いつも弟はお腹をこわしていました。

また、祖父はとてもお酒の好きな人でした。
一日中、水代わりに呑んでいました。
特に、焼酎をビールで割って呑むのが好きな人でした。
それでも、一度も祖父が酔っぱらってる姿を見たことはありませんでした。

私たち姉弟は、祖父は不死身の人のように思っていました。
当時は、祖父が倒れ、歩けなくなるなんて考えたこともありませんでした。

けれど、そんな日が突然訪れたのです。

私が、当時高校三年の夏、母も留守の時でした。
警察からの電話。

「○○○○さんはお宅のおじいさんですね?」
「駅の階段で倒れまして、救急車で病院に運ばれました。すぐきてください」
私は、一瞬、何が起きたのか理解できませんでしが
「はい、すぐに向かいます」
そういって、電話を切っていました。
しかし、終電の時間はとっくに過ぎていて、祖父のいる病院までは
高速道路を走っても、一時間はかかるところでした。
まだ、免許も持っていない私には、どうしたらいいのか検討がつきませんでした。
ちょうど、そこに母が帰宅しました。
訳を話すと、すぐに車に乗り込み病院へ向かいました。



つづく・・・


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